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僕にとっての Happy Hacking Keyboard

堀内寛己(ほりうちひろき) x19290@gmail.com

ブラインドタッチができるようになった

僕が社会人としてプログラムを書き始めたときも、 その会社の Star というワープロを使い始めたときも、 キーボードの配列はアメリカ式だった。 この配列では例外なく、

* Shift-8
( Shift-9
) Shift-0

となる。 そして僕はこの配列でブラインドタッチができるようになった。 部署が変わって、 憧れの SPARCstation を駆って仕事をするようになったときも、 しばらくはこの配列だった。 それが当然のことだと思っていた。

最初の異変

ところがそれまで使っていた SPARCstation をアップグレードしたとき、 メーカーに押し付けられたのは、 仮名の刻印された変な配列のキーボードだった。

* Shift-: (今「:」がある場所には、 もともと「'」がいた!)
( Shift-8
) Shift-9

他にもたくさんあったが要するに、 殆どの記号文字の場所が、 見るも無惨に変更されていたのだった。

ご存じの方もいるかと思うが、 Unix というのはとりわけ記号文字を重視(濫用と言っても良い)する一風変わった OS である。

^!@#%&*?~`"'+-=;:,.{([<\|/>])}$

それぞれに特別な意味があって、 その意味とキー配列を体で憶えていて、 これを(少なくともキーボードは)見ないで打ち込むめるというのが、 僕ら Unix プログラマーにとって必須の技能だった。 それが、 業界の雄であるはずの Sun に、 こんな酷い嫌がらせを受けるとは。 本当に夢にも思わなかった。

でも、 このときこんなに怒り狂ったのは僕の周囲では僕だけだった。 他の人はさっさと、 この変な配列に順応していった。 僕は僕で、 キーバインディングというものを変更することで、 あっさりこの問題から逃れ、 しばらく忘れていた。

MS-DOS が攻めてきた

MS-DOG などと嘲笑していたばちがあたったのだろうか。 会社の中で MS-DOS は、 着実にその存在感を増し、 不本意ながら僕もこれを使わざるを得なくなってきた。 このとき日本語キーボード問題が再燃する。 今度はさらに悪いことに、 スペースバーがズタズタに切り裂かれている。 もはやキーバインディングの変更くらいでは対抗し切れない。

救世主現る

そんな中、 当時頼りしていた技術系のメーリングリスト (infotalk だったかな)にこの問題についてたずねたら、 「私は Happy Hacking Keyboard を愛用しています」というご返事をいただいた。 調べるとなんと、 和田先生が発案したキーボードだというではないか。 先生自身の手による開発に至る経緯を読んで僕は、 目頭を熱くした(注: 話を作りすぎたかもしれない)。 憤っていたのは僕だけではなかった。 先生だって「これはおかしい」と思っていらしたんだ。

もちろん僕は速攻で、 会社のお金でいわゆる初代 Happy Hacking Keyboard を買った。 僕はこのとき上司に、 自分がこのようなものを見つけてどんなに嬉しかったか語ったが、 当然のように上司の反応は、 「ああ、 わかったからさっさと仕事しろ」というものだった。

後日談

日本語キーボード問題はしつこく再燃する。 僕はトラックポイントが好きで、 長年 ThinkPad を愛用している。 ThinkPad のキーボードは伝統的に、 有償だがアメリカ配列のものと交換することができた。 ところがその古き良き伝統が失われつつあるようなのであった。 そして、 それまで使っていた ThinkPad 600E が壊れたとき、 トラックポイントを取るかアメリカ配列を取るかで悩んだ末、 いつまでも意地を張ることをやめようと思ってとうとう最新の、 しかし日本語キーボードのみの ThinkPad を買ってしまった。

そんな敗北感を mixi の Happy Hacking Keyboard コミュニティにぐちった

そんな時こそ、 HappyHackingKeyboard。

なんか UNIX の凄い人だったかも、 ラップトップにHHK載せて使ってた。

自分もそうしています。

という話をしてくれた人がいた。 最初は冗談だろうと思っていたのだったが、 その凄い人というのが ストールマン だと知って(再び目頭を熱くしたことは言うまでもない)、 また実際にそうしている人の写真も見せてもらって、 立ち直ることができた。 先日も、 ネット上で、 ストールマンが Happy Hacking Keyboard を実際にラップトップに載せている写真を発見した。


注釈

Star

Xerox 社が開発した空前のインターネットワーキング高級ワープロ。

MS-DOG

MS-DOS の蔑称。

話を作りすぎたかもしれない

今読み返すと先生はこのとき、 日本語配列での記号文字の使いづらさについて、 カッコとコッカ(注: コッカ)のことしか挙げていないし、 キーバインディングで対抗できるということも言っている。 でもその後、 Happy Hacking Keyboad が、 「メーカが自分たちの希望を無視して日本語配列を押しつけてくること」が許せない人達の絶大なる支持を得るようになっていったことも事実である。

コッカ

閉じカッコのこと。 先生のつまらないオヤジギャグ。