僕にとっての Linus

created: *Date: 2015-07-29*

堀内寛己(ほりうちひろき) x19290@gmail.com

Linus との出会い

Linus Torvalds[1] (カタカナ表記は間抜けな感じになるのでしません) というフィンランド人の功績については、 いつ頃からか、 ほぼ正確に知っていました。 そして彼の早過ぎる自伝[2]の存在もその頃から知っていました。

人生を変えた本

僕は、 あるひどい躁期に、 この本に「呼ばれた」ような気がして図書館で借りて読みました。 Linus にとって人生を変えた本は、 後にネットで激しく罵りあう[3]ことになるタネンバウム教授[4]の著書でした。 そして僕にとってはまさに Linus の自伝が「人生を変えた本」になりました。

躁人間が読んだ Linus の自伝

和田先生推薦の「ハッカーズ[5]」は、 たしかに面白い本です。 しかしいかんせんエピローグが暗い。

ハッカーズのエピローグはストールマン[6]へのインタビューです。 彼は声を荒げ、 涙を流して著者にハッカー倫理の衰退を訴えます。 そして「たった一人になろうとも、 それを食い止め、 この世の悪と戦う決意[7]」を胸に MIT[8]の職を辞するのです。

「ハッカーズ」の主人公であるハッカーズはみな、 アメリカ人でした。 ストールマンを始めとしたアメリカのエリートも大勢登場します。 そんな彼らの悲痛な物語の誰にも予測できなかった痛快な続編を書いたのは、 はたしてこの生意気なフィンランドの青年[9]でした。 Linus の自伝が「ハッカーズ」の続編だなんて、 そんなことを言う書評は聞いたこともありませんが、 躁人間である僕にはそう読めたのです。

彼はもう怖いもの知らずで、 スティーブ・ジョブズを「つまらない人間」と評し、 あの Unix 界の至宝とも言えるビル・ジョイさえも、 シリコンバレーで会った最も魅力的な人物だったが「技術者としては興味を惹かれなかった」と言うのです。 ストールマンについては「フリーソフトウェア界の神様」と称える一方で「ムカつく」とも言っています。 これらの発言は彼が、 その自信に見合うだけの仕事をやってのけたからできたものです。 彼はストールマンにさえできなかった仕事を成し遂げ、 (カーネルと呼ばれる OS の心臓部を書き)、 既に出揃っていた GNU のパーツとこれを「統合」して、 「完全にフリーな Unix 互換の OS[10]を創り上げました。

僕はこの本から、 躁人間ならではの勝手なメッセージを受けとっています。 それは、 「君がどんなに無能なプログラマーだったとしても、 君にはフリーソフトウェアムーブメントに参加する資格がある」というものです。 まさか Linus にそのような考えがあるとは思えないのですが、 とにかく僕はその「自分が勝手に解釈した言葉」に勇気づけられ、 それ以来僕の「うつ」はピタリと止まりました。 その点ストールマンは無能なプログラマーにはすごく冷淡で、 「そういう君には、 せいぜい献金してもらいたい」と言うのです。

注釈:

  1. Linus Torvalds

    ^ リーナス・トーバルズ - Wikipedia

  2. 早過ぎる自伝

    ^ それがぼくには楽しかったから - Wikipedia

  3. ネットで激しく罵りあう

    ^ 有名な罵りあいで、 ウィキペディアでも「アンドリュー・タネンバウムとリーヌス・トーヴァルズの議論」で概要を知ることができます。 Linus の自伝の版によっては、 まるごと和訳が付録に載っています。

    Linus の名誉のために言っておくと、 最初に Linus の仕事をつまり Linus を侮辱したのは、 タネンバウム教授です。

  4. タネンバウム教授

    ^ アンドリュー・タネンバウム - Wikipedia

  5. ハッカーズ

    ^ Amazon.co.jp: ハッカーズ: スティーブン・レビー, 松田 信子, 古橋 芳恵: 本

  6. ストールマン

    ^

  7. たった一人になろうとも、 それを食い止め、 この世の悪と戦う決意

    ^ GNU[11] という名の、 完全にフリーな Unix 互換の OS をたった一人でも創るという決意でした。 彼は GNU があれば諸悪の根源である独占ソフトウェアを無意味化できると思っていたのでしょう。 彼が独占ソフトウェアを悪と断罪するのは、 それが「友情」を破壊すると考えているからです。

  8. MIT

    ^ 言わずと知れたアメリカの理系の超エリート校のひとつです。 マサチューセッツ工科大学 - Wikipedia

  9. 生意気なフィンランドの青年

    ^ もちろん Linus のことです。

  10. 完全にフリーな Unix 互換の OS

    ^ これこそがストールマンが創りたかった OS、 つまり GNU であったとも言えるのです。 しかし Linus や世間は Linus の成果を Linux と呼びました。

    面白くなかったのがストールマンです。 いわゆる Linux のうちその心臓部以外は GNU のために書かれていたものを流用していたからです。 だから彼は今日もこれを、 GNU/Linux[12]と呼ぶように怒鳴り散らしているはずです。 そしてうっかり彼の前でこれを Linux と呼んでしまった哀れな人に、 “It's not Linux!” と罵声を浴びせているはずです。

  11. GNU

    ^ GNU - Wikipedia (この日本語版の記述は不適切です。 GNU はあくまでも OS の名であってプロジェクトの名前ではありません。 GNU を創るプロジェクトは「GNU プロジェクト」としてこれと区別しなければなりません)

  12. GNU/Linux

    ^ 一方、 ストールマンが GNU/Linux という言葉に込めた想いは、 そのように程度の低いものではないはずです。 これについてはサイト内に別掲します。 GNU/Linux に込められた想い (サイト内文書)

updated: $Date: 2015-12-01$